第2回 ミナトの汽笛が聞こえない

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近代的に整備された神戸港の一角。出入りする船は減った(神戸市中央区で)

最近は、正月を迎える「カウントダウン」がはやっている。社寺はもちろん海岸やレストラン、コンサート会場でも、大晦日から新年への「10、9、8、………、ゼロ」と、盛り上がる。年明けをイベント化するのは、いまや若者だけの特権ではないようだ。

神戸の新年は、ミナトに停泊する船舶がいっせいに鳴らす汽笛の音で明ける、というのが、長年のしきたりだった。神戸市内に住むようになった30年前、除夜の鐘とともに、ボォー、ボォーと響き合う汽笛の音が六甲山にこだまするのを聞いて感動したものだ。

だが、ここ数年は船が少なくなり、音も小さくなってしまった。港湾の近代化で荷揚げが速くなり、停泊する船が減ったのが原因だ。沖に何日も停まってはしけで荷揚げをするといった風景が消えた。神戸の文化は港の外国船からという伝統も無くなりつつある。技術の進歩は確かに人間にとって快いものだが、一方で人の心の豊さを台無しにしてしまうこともある。

波止場に集まった人々のカウントダウンに負けない、大きな汽笛の響きの復活をこの大晦日に期待したい。

(2003年12月22日)

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