第40回 老舗とともに残したい ~「トアロード」の魅力~

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通りを跨ぐアーチの「TOR ROAD」が、トアロードと知る手がかりになっているが・・・(神戸市中央区で)

久しぶりにトアロードを歩いた。阪神大震災前に比べると空が狭い。見上げるようなビルが増えたせいか、圧迫感を感じる。神戸に住み始めた約30年前のトアロードは、シックな大人のストリートだった。元町通りやセンター街が「動」、トアロードは「静」であった。

TOR ROAD。神戸らしい名がハイカラで、他にはない店の集まりが魅力だった。ブティックの草分け「エスターニュートン」、米国スタイルのドラッグストア「アメリカンファーマシー」、洋菓子と喫茶の「コロンバン」など、忘れられない店が多い。

震災後は雨後のタケノコのように雑居ビルが増え、通りは一変した。カラフルな看板が目立ち、雑然とした雰囲気に。日本のどこにでもある街と変わらない。通りを跨ぐアーチに「TOA ROAD」というロゴがあって、ようやく神戸の街とわかるほどだ。

マキシン、クロス、デリカテッセン、ハイウェイ……。昔からの名をとどめる老舗がトアロードらしさを今に伝えているが、通りとしての魅力は失われてしまった。

街並みは変化する。これは経済優先の世の中では仕方が無い。しかし、失われた大切なものは二度と戻ってこない。街並みは、いったい誰のものなのか。神戸がこれからも観光で生き残るのなら、今こそ「景観」を真剣に考えるべきではないだろうか。老舗の持ち味が残る建物や店構えを残しておきたい。トアロードの一角に立って、そう考えた。

(2006年7月7日)

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