第10回 細るのは残念、生田川沿いの桜堤

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年々細る生田川沿いのサクラ。まだつぼみが出かけたばかり(神戸市布引で)

わが家のリビングでは毎年、雛飾りをしまうと、壁に大きなサクラの絵がかかる。「身延山枝垂桜」。淡い桜色、というより白に近い花びらが無数に描かれた中島千波の作品だ。部屋がパッと明るくなり、ひと足先に春が訪れる。絵を見ながらの花見酒と、しゃれてみるのも一興だ。

近くの生田川の堤は桜の名所。約30年前に神戸に引っ越してきたとき、両岸にあふれんばかりに咲き誇る桜並木に感動したものだ。美しく素晴らしい光景だった。

だが、ここ数年、堤の桜は年ごとにあわれな姿になってきた。周辺の道路や空き地整備の犠牲になり、車の排ガスでやせ細ったり、撤去されたり・・・・・・。新幹線・新神戸駅から見おろして見事だった並木は、すっかり影をひそめた。

道路や公園は立派になったが、市民が楽しみにしている年に一度の美しさが損なわれてしまった。 利便性はたしかに文化の進歩だが、こころを和ませる情景も大切な文化であるはずだ。

(2004年3月17日)

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