第28回 残った!町なかの桜の木

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桜の木は残った!駐車場の一角に残った桜。今年も溢れんばかりの花を咲かせ、近くの人たちの心をなごませた(神戸市中央区熊内町で)

予想よりかなり開花が遅れた今年の桜。静かに咲いて静かに去った――。日本の春を象徴する桜の話はこの間、多くのメディアで取り上げられ、人々は桜に、めいめいの「春」を感じたに違いない。

すでに散り初めたが、神戸市の町なかの一角にある桜の木の話を紹介したい。

それは、桜の名所・生田川に近い中央区熊内町の住宅街にある古木だ。雲中小学校の通学路のそばに立つこの木は、もともと私立ラファイエル幼稚園の前庭にあり、木の下で遊ぶ園児の成長を見守ってきた。ところが、数年前に幼稚園が閉園となった。園舎が壊され、跡地に住宅が建った。前庭は舗装され、車5、6台分の駐車場になった。工事が始まったとき、「桜の木は切られる」と、だれもが思った。だが、この土地の新しい持ち主は、桜を残した。車1台分のスペースを取れるのに、根元の土とともに残した。それまで毎年、この桜を楽しんだ人たちはほっと胸をなでおろした。

粋なはからいで残った桜は、今年もたくさんの花をつけ、ふっくらとした優美な姿を見せた。通学の子どもたちが、また、買い物の主婦らが、満開の桜を見上げた。夜は隣の人がライトアップをして、いっそう際だたせ、薄暗い通りは、文字通り花が咲き、周囲の人の心をなごませた。

(2005年4月16日)

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